「叱る」とは
「叱る」には本来、目的があるはずです。
目的は、「相手が良くなってくれること」「相手が悪くならないようにする」「相手の成長を促すこと」などです。
相手の「できていない点」や「改善すべき点」を指摘し、今後に活かして、成長してもらいたいと思って叱るのです。
「叱る」ことにおいては、相手を思って、相手を良い方向に導くことが重要です。
感情にまかせて怒りをぶちまけて、相手の心が折れてしまっては、逆効果です。
「叱る」と「怒る」の違い
「叱る」と「怒る」の大きな違いは以下の3つだと思います。
- 「怒る」は自分の為、「叱る」は相手の為に行われます。
- 「怒る」は感情的に行われます。「叱る」は理性的に理路整然に行われます。
- 「怒る」は過去に対して行います。「叱る」は未来に対して行います。
「叱る」場合は、冷静に相手に伝わるように言葉を選びながら、相手が受け取りやすいように伝える必要があります。
自分の考えや感情を一方的に押しつけるのではなく、相手の為を思って、相手が理解しやすいように話をする必要があります。
「怒る」は、起きてしまったことに対して、文句を言っているだけで、次に繋がる改善がありません。
「叱る」ときは、起きてしまった事を冷静に分析し、反省し、今後に活かすための話をしていかなければなりません。起きてしまったことに対しては、その事実は消えません。
大切なのは、「振り返り」「反省して」「起きたことから何を学べるか?」と言うことです。
「未来のためにどうしたら良いか?」という未来志向の方が前向きで良いと思いませんか?
自分の感情に任せて、「怒る」のでは、相手の「成長」は得られません。
冷静に相手に伝わるように言葉を選びながら、相手が受け取りやすく話し、相手が良くなるように導くことが「叱る」ことです。そこには「相手を思いやる気持ち」があるかどうかが大切だと思います。
「叱る」ポイント
「叱る」上で大切なポイントは大きくは以下の二つだと思います。
- 相手を「納得」させる
- 相手を「活かす」ことを心がける
相手を「納得」させる
相手を「納得」させる為には「問題と改善のメリットを明確に提示する」「論理的にわかりやすく説明する」必要があります。
そもそも相手がなぜ叱られているのか理由を理解していない場合があります。
まず事実を正確に確認し、それによってどの様な問題やリスクがあるか客観的に確認する必要があります。
例えば、部下がお客様に間違った説明をしてしまった時に、その間違いの箇所を指摘し、それによって「具体的にお客様にどの様な不利益が生じるのか」「誤解によってどの様なトラブルに発展する可能性があるのか」「お客様とトラブルになったときにそのリカバリーをするのにどれだけ大変なのか」などを、わかりやすく説明します。
そして、具体的な改善案を共有し、今後の再発防止を理解してもらいます。
その際に、改善することで、どれだけのメリットがあるのか、どれだけリスクが解消されるのかを理解していただきます。
これらの説明は、相手の力量により理解のスピードが異なるので、相手に合わせて行っていきます。
例えば、相手がわかりやすい具体例を示して、かみ砕いて説明するなどの工夫が必要です。
また、叱る内容が多すぎると、全て消化できなくなります。なるべく重要なモノに絞り、シンプルに伝えていく必要があります。相手の理解には段階があると思っていた方が良いと思います。同じ事を何回も言わなければならないこともありますし、理解が進むにつれてさらに深く話をしていく必要もあります。
そもそも問題が発生した時に、本人はパニックになって思考停止になっている場合もあります。
そういった場合は、優しく段階を踏んで、導いてあげることも必要だと思います。
相手を「活かす」ことを心がける
「叱る」時は相手を精神的に追い込んでは駄目です。
相手の心が折れてしまっては、全てが台無しです。
相手の精神が崩壊してしまった場合、「パワハラ」として訴えられるケースもあるので注意が必要です。
ポイントとしては
- 人前で叱らない:別室に連れていって1対1で叱る。なるべく皆の前で自尊心を傷つけないよう注意してください。
- 相手の「気持ち」や「弁明」にも耳を傾けてあげる:相手の気持ちに寄り添ってください。
- 他の人と比べない:人それぞれ長所があります。人と比較されると「自分はダメなんだ」という心理に陥りやすくなります。あくまでも個人の個性を尊重して相手に合った叱り方をしてあげて下さい。
- 否定するような言葉をかけない:否定する言葉は決して相手のためにならず、見放されている印象を与えてしまいますので逆効果です。
- 起きた問題よりも改善にフォーカスする:起きた問題を分析して反省することは大切です。さらに改善することができればそれは成長です。過去に起きた問題により、それを糧にして「成長」し、未来に活かせるように、未来思考に導くことが大切です。
- フォローが必要:相手は反省しているので大きく落ち込んでいます。そんなときは、フォローが必要です。
- 最後は期待で締める:「叱ってはいるが、見捨ててはいないんだぞ」というメッセージが大切です。「次はできるよ」とポジティブな感情を持つと、お互いの気持が明るく切り替わります。
- 相手の人格を否定しては絶対駄目:モチベーションを保てないと全てが無駄になります。相手を活かすためには人格否定は絶対に駄目です。
- 命令口調で威圧的に注意しては駄目:相手を萎縮させてしまうのはNGです。恐怖によって支配しても相手は何も腹落ちしません。
間違って「叱った」時
間違って「叱った」時は、なるべく早く真摯に謝罪すべきです。
理不尽な対応を放置していると、人間関係が修復できないくらい悪化する場合があります。
愛があるか
「叱る」ときに、一番大切なのは「相手のことを思って」いるかです。
野球解説で有名な野村克也さんは、『「叱る」と「褒める」というのは同意語だ。情熱や愛情が無いと、叱っても、ただ怒られているというとらえ方をする。』とおっしゃっています。
組織で働く時、まずゴールが共有されている事が大切です。
同じゴールを目指すならば、一緒に働く人が良くなれば、「幸せ」は共有されるはずです。
会社という組織では、それぞれの社員が成長し、会社が成長し、利益を享受し、達成感を共有し、社会貢献を感じる事で幸福感を得られます。そこには上でもなく下でもなく、共通のゴールがあります。
お互いの「幸せ」が享受されるために、「相手のことを思って」叱ることが大切だと思います。
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