機長のほうが副操縦士より事故が多いのは何故か?
旅客機では機長と副操縦士が任務を分担してフライトします。副操縦士から機長に昇格するためには10年程度の時間がかかります。よって、機長は副操縦士より経験・技術・判断能力といった面において能力が高いと考えられます。
しかし、過去の航空機事故を調べると、機長が操縦桿を握っている時のほうが、副操縦士が操縦桿を握っている時よりも墜落事故が起こる確率が高いのです。
機長と副操縦士との間には権力格差が存在します。
この権力格差により、「副機長が機長の間違の指摘を遠慮してしまう」「副機長からの間違いの指摘を機長が聞く耳を持たない」などの為に、事故の確率が上がっていると考えられます。
組織の意思決定の質を高めるには「意見の表明による摩擦の表出」が重要です。
誰かの行動や判断に対して、他の誰かが「それはおかしい」と気付いた際に、遠慮なくそれを指摘することができる環境が必要です。
先進7カ国の権力格差
先進7カ国の権力格差は以下の通りです。数字が大きい方が、権力格差が大きくなります。
フランス :68
日本 :54
イタリア :50
アメリカ :39
カナダ :39
旧西ドイツ :35
イギリス :35
日本は、先進国の中で権力格差が大きな国だと言えます。
上役に向かって反論する際に部下が感じる心理的な抵抗の度合いは、日本はかなり高いと思われます。
日本における権力格差が引き起こした事件
権力格差により権力者に対して弱者から意見が言えない為、引き起こされた事件がいくつかあります。
「日大アメフト部監督による悪質タックルの指示」
「東芝の何年にもわたる粉飾決算」
「財務省による森友・加計問題に関する情報操作」
組織の中で、権力者によって誤った意思決定が行われようとしている時、権力弱者が「それはおかしい」と声を上げられない為、このような事件が発生してしまいます。
権力者が間違った判断を出した際にそのまま権力者の言いなりになると、一時的に組織内での権力者の権威は保たれるかもしれませんが、社会的に問題が発覚したときに、取り返しの付かないことになります。組織内で正常にチェック機能が働くためには、権力の弱い立場からも「意見が言える環境」が必要です。
若者から学ぼうとしている大人は少ない
若者から積極的に学ぼうとしている大人は約2割だそうです。
理由は、「若者は経験や知識が少ないから聞くに値しない」と言うことらしいです。
逆に2割の若者から積極的に学ぼうとしている人達は、以下のように「新しい視点」に可能性を感じているようです。
- 自分たちとは異質なもの(感性・考え方など)から新しい視点を見出すことができる可能性がある
- 新しい技術力、新しい商品ニーズを知ることができる
- まだ柔軟な発想ができる若者に可能性を感じる
- 従来のやり方や考え方に対して、違った視点を発見することができる
稚拙だと思う意見であっても、そこに新たな発見や、何か本質や真実があるかもしれません。
古い常識にこだわらず、意識的に新たな考え方やり方を学び取り入れ事も、この変化の大きい時代では必要な事だと思います。
物事を多面的に見る必要性
物事には必ずメリットともデメリットが存在します。
また、視点を変えると色々な見方ができるはずです。
物事を理解するためには、多面的な視点から検討することが大切です。
そして、なるべく正解に近い答えを見つけるためには、色々な人が色々な視点から意見をぶつけ合いながらディベートする事が必要です。
反論にも真摯に耳を傾け、主張のロジックについて筋が通っているのか検証し、判断における根拠の妥当性を証明する。その為には、反対意見を黙らせるのではなく、自由にディスカッションできる環境を作る必要があります。
他者の意見には真摯に耳をかたむけるべき
議論においては、反論されると「相手に打ち負かされた」「相手に主張をねじ込まれた」と考える人もいるでしょうが、議論の本来の目的は勝ち負けではなく、お互いが納得できる「正しい答え」を一緒に見つけ出していく事です。自分とは異なる意見であっても、そこに本質や真実があるかもしれません。ですから反対意見であっても真摯に発言の意図や理由に耳を傾けるようにすべきです。
ディスカッションをする上で、正しく議論が進むために、以下の事に注意しましょう。
- 単純否定をしない:「そんなことはあり得ない」「話にならない」など理由も言わずに単純否定しない
- 人格攻撃/単なる罵倒をしない:感情論にならないよう、論理に関係ない攻撃は避ける
- 話の腰を折らない:細かい言い回しを指摘したり、重箱の隅をつつくのでは無く、本質的な議論にフォーカスする
最後に、日本では文化的にまだまだ権力格差は大きく、気兼ねなくディスカッションできる環境が整っていないという事実がある事を認識し、権力者は努めて「気兼ねなくディスカッションできる環境」を整えるよう努力する必要があると思います。
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