アンビバレンス(ambivalence)

アンビバレンスとは、ある事象に対して、相反する感情を同時に持ったりすることです。
例えば

  • 好きと嫌いの感情を同時に持つこと
  • 尊敬と軽蔑の感情を同時に持つこと
  • ひとりになりたいのに誰かに気にしてほしい
  • 行きたいのに面倒くさい
  • やらなければならないとわかっているが、やりたくない

などです。

アンビバレンスが強まった状態は、人が悩みを抱えた状態や不安を抱えた状態になっている可能性が高いと言われています。
例えば、「仕事に行かなければならないが、仕事に行きたくない」といった状態は、仕事でトラブルを抱えていたり、上手くいっていなかったりします。

二つの感情のうち、一方が「望ましくない」状態の場合、無意識の内に心が抑圧され、葛藤状態に陥り、神経症の原因となることもあります。
また、アンビバレンスが強まっている相手に何かを強要すると、正反対の行動を行うことがあります。親に勉強しなさいと言われると、かえってやる気が無ってしまいます。
逆説的な反応を示す人は何らかの不安を抱えていることが多くあります。
愛されないならこちらから嫌われようとする心理が働いたりします。
相手が期待していることとは正反対の行動を取ることで嫌われようとするのです。
人は幼児期には往々にして両親についてスプリッティングな見方をしますが、成長するにしたがってアンビバレントな見方をするようになります。
ここで言う「スプリッティング」とは、「お母さんが大好きなので、お父さんは嫌い」というような精神状態です。
何かの拍子に母親のことを嫌いになると、「お母さんは嫌いなので、お父さんが好き」といった精神状態に切り替わります。
そのような精神状態が、年齢を重ね、精神が成長するとアンビバレントな状態になります。
すなわち、大人になると「お母さんのここは嫌いだけれど、ここは好き」といった感じです。
アンビバレントな思考とは、左右を見ながら、いつもバランスを探る思考です。
人の話を「なるほど」と聞きながら、一方で「それは正しいのか」と疑ってみる。
物事を俯瞰してみる場合には、アンビバレントな思考は有効です。

「アンビバレンス」は、複雑な物事の全体を、多面的に捉えられるようになったという、成熟の兆候ではありますが、これは平均台の上を歩くような「非常に神経を使う疲れる作業」でもあります。
また、ある程度成熟してくると「やっと築いたこの環境を、崩したくなる欲求」がわいてきたりします。
例えば、仕事に成功して年収も地位も手に入れた人が「あれ、つまらないな」という気持ちが芽生えたりします。地位があっても「わくわく感」がない。「新しい世界を見てみたい」といった感情です。

アンビバレンス(ambivalence)な状態は、色々な場面で発生します。
ある意味、精神の不安定さであり、ジレンマであり、成長の過程でもあります。
アンビバレンス(ambivalence)が強すぎると心が引き裂かれた状態(Schizophrenie)になり、病気を発症してしまうことがあります。

  • 連合弛緩:考えのまとまりがなくなり、支離滅裂になる
  • 感情鈍麻:その場にふさわしい感情の表現の失われる
  • 自閉:自分自身のからに閉じこもり、現実との関係を失う
  • 両価性:相対立した感情の動きを体験する

色々な場面でアンビバレンスは発生します。心のバランスを崩さないように気をつけましょう。

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